[書評] ポジティブシンキングでは目標達成できない!? ~「残酷すぎる成功法則」を読んで ~

どんな本か?

残酷すぎる成功法則

残酷すぎる成功法則

自己啓発本が結構好きなので、数はたくさん読んできたのですが、 中には本当かな?と思ってしまうようなものもありました。

ただ数ある自己啓発本の中でも橘玲さんが書いた『幸福の「資本」論――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』と言う本はいわゆるただの「思考を変えればうまくいく!」とか「成功できるたった一つの法則」みたいな怪しい類のものではなく、人生における幸せを資本と言う切り口で書いた作品で個人的にとても納得がいく本でした。

その橘さんが監訳を務めたのがこの「残酷すぎる成功法則」と言う本です。

この本によると、今までの自己啓発本は2つのパターンに分かれています。

  1. 私はこの方法で成功しました。あなたもこれを使えば成功できます系
  2. 歴史的な偉人はこう言っている。もしくは偉人はこう決断した系

上記のような今までの自己啓発本をある種批判する形で書かれたのがこの本で、「科学的なエビデンスに基づいて主張しましょうよ」というテーマのもと人の成功とか幸せについて書かれています。

ポジティブ思考では目標を達成できない?

例えば、アメリカ海軍の厳しい訓練に合格する人と途中で脱落する人の違いは「ポジティブな心のつぶやき」があるかということが海軍の調査でわかったことが本書では挙げられています。

海軍の調査で、グリッドを持った人びとが逆境に耐える際に行っている(ときに無意識に)いくつかのことが明らかになった。そのなかに、心理学的調査で何度も浮かびあがった一つの習性があった。

それは「ポジティブな心のつぶやき」だった。

では、常にポジティブでいればいいかというとそういうことでもなく、ポジティブな思考はときに目標を遠ざけてしまうことも本書で挙げられています。

ニューヨーク大学心理学教授のガブリエル・エッティンゲンは、欲しいものを夢に思い描くだけで、実現の可能性が高まるといった類の説に猜疑的だった。

(中略)

あなたは、ダイエット後のほっそりした水着姿を思い描いたりするだろうか? ある実験で、そんな風にポジティブに思い描いた女性たちは、ネガティブなイメージを浮かべた女性たちに比べて、体重の減少分が一〇キロほど少なかったという。完璧に理想通りの仕事に就くことを夢見ているなら、出願書類を出す数が自然と減り、その結果、内定をもらえる数も減ることになる。成績でたくさんAをもらうことをイメージしている者は、勉強時間が減り、成績が落ちることになる。

つまり、ポジティブ思考には有効に機能する場合と逆に弊害となる場合があるということです。 ポジティブ思考だけでなく本書ではこのような一般的な自己啓発本で言われている思考法や成功哲学について、その効果を検証し、その効果と弊害を明らかにしています。

現実を変えるにはどうすればいい?

ポジティブ思考が目標達成に悪影響を及ぼすなら、目標を達成するのにどうすればいいのでしょう?

ニューヨーク大学の心理学者、ピーター・ゴルヴィツァーとヴェロニカ・ブランドスタッターの研究によれば、たとえば、目標を達成するための行動をいつ、どこで、どのように取るかなど、ざっくりと計画しているだけで、学生たちが目標を実現できる確率が四〇%上がったという。

二つの魔法の言葉は、「もしも(If)」と「そのときは(Then)」である。予見できるどんな障害に対しても、「もしXが起きたら、Yをすることで対処しよう」と考えておくだけで、結果は大違いだ。

実はあらかじめ計画をしておくこと、それも、もしものことを考えて計画をたてておくことが大事だと述べられています。 これをより実践しやすい形にまとめたものがWOOPと呼ばれるものです。 WOOPとは以下の頭文字をとったもので、仕事、人間関係、ダイエットなどあらゆる目標に対して適用できるものです。

  • 願い(Wish)
  • 成果(Outcome)
  • 障害(Obstacle)
  • 計画(Plan)

しかしこのWOOPはあまりにも現実可能性がないものには効かない(「明日までに20キロ痩せる・・・など」)とのこと。

何か目標がある場合、まずこのWOOPを考えてみることが目標を達成させる近道かもしれません。

つまるとこ何が大事なの?

本書では「自分を知ること」と「調整すること」が大切だと説いています。

成功とは、一つだけの特性の成果ではない。それは、「自分はどんな人間か」と「どんな人間を目指したいか」の二つを加味しつつ、そのバランスを調整することだ。

自己啓発本で言われていることや世の成功法則というものには必ず良い面と悪い面があります。まずはそれらについて科学的なエビデンスを元に理解し、自分が進みたい方向に進んでいけるようにうまいこと利用しながら調整していく(バランスをとっていく)ことがいいのでしょう。

読んでみての感想

普段、自己啓発本を読むときはひどく落ち込んでいたり、逆に意識が高すぎる時が多く、内容の正しさよりも読むことで感化されることを目的としてしまうことが多かったのですが、エビデンスベースで展開されると変に心が揺れ動くことが無いので、逆に成功や幸せというものをどう実現か冷静に考えることができたのがこの本を読んで一番良かったことかもしれません。

ちなみに

橘さんの公式サイトに序文と解説が載っていました。

タダなのでぜひ読んでみてください。

エリック・バーカー『残酷すぎる成功法則』序文

エリック・バーカー『残酷すぎる成功法則』解説